アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎とは

アトピー皮膚の乾燥、赤みや強いかゆみ、湿疹を繰り返す慢性の皮膚疾患です。ほとんどは幼少期に発症しますが、小学生以降の発症や、いったん治って成人してから再び発症するケースも増えてきています。皮膚が乾燥し、皮膚に保護バリアが失われている状態ですから、保湿が特に重要です。

アトピー性皮膚炎の原因

アレルギーになりやすい、皮膚が乾燥しやすいといったもともとの体質があって、そこに何らかの刺激が加わることで発症します。きっかけになる刺激には、花粉、ハウスダスト、汗、化学物質、そして掻いてしまうことなどがあります。本人や血縁者がアトピー性皮膚炎や花粉症、喘息などアレルギー性疾患を持っていとなりやすい傾向があります。

 

皮膚の乾燥について

皮膚は保湿成分が適度な水分を保持することでバリア機能が正常に働き、異物から守られます。保湿成分には、表面の皮脂や皮脂膜、角質層の天然保湿因子(NMF)、そして角質細胞同士の隙間には角質細胞間脂質(セラミドなど)があります。この保湿成分が不足すると皮膚が乾燥してバリア機能が失われ、皮膚の炎症が慢性化・悪化しやすくなります。そのためアトピー性皮膚炎では、かゆみや炎症といった症状を抑える治療に加え、皮膚の保湿をしっかり行ってバリア機能を正常化させることも不可欠です。

アトピー性皮膚炎の症状

発症年齢にかかわらず共通した症状は、かゆみと全身の皮膚の乾燥です。

幼児期に発症するアトピー性皮膚炎では、症状がまず顔に現れ、進行につれて全身に広がっていきます。小学生以降に発症する場合には、首や関節など皮膚のやわらかい部分に強い症状が現れて、その後全身に広がっていきます。悪化すると皮膚が分厚くなり、適切な治療を受けないと黒っぽくなっていきます。かゆみが強いと掻き壊してしまい、悪化させやすいので早めに受診しましょう。

幼少期に発症したケースでは小学校高学年くらいまでに症状が落ち着くことが多いのですが、症状が消えて大人になってから環境の変化といったストレスなどをきっかけに再発することがあります。

アトピー性皮膚炎の診断

皮膚の状態を観察し、症状の内容、現れた時期やきっかけ、推移などを伺います。乳児は2か月以上、それ以外は6か月以上に渡って症状を繰り返している場合、アトピー性皮膚炎が疑われます。アレルギー素因の有無も診断には重要なポイントです。

検査

保険適用の血液検査で、花粉やハウスダストなど症状を起こす刺激につながるアレルゲン(アレルギーの原因物質)を調べることができます。また、アトピー性皮膚炎の重症度もわかります。化学物質などに対するアレルギーの有無は、保険適用のパッチテストで調べることができます。この両検査は診断に不可欠なものではありませんが、セルフケアに役立つためご希望があれば行っています。

アトピー性皮膚炎の治療

つらい症状を緩和させ、良い状態の肌をキープしていくことが重要です。繰り返し症状を起こす慢性疾患ですが、適切な治療と保湿を続けていればいずれ症状が落ち着きます。治療は主に保湿、そして外用薬を用いた治療を行っていきます。症状が強い場合には、抗ヒスタミン薬や免疫抑制剤などの内服薬を使用することもあります。また、時間はかかりますが漢方を併用して体質改善効果につなげる治療も可能です。

外用薬

ステロイド外用薬

アトピー性皮膚炎では、かゆみや炎症、湿疹を効果的に鎮めることができるステロイドを使った治療が基本となります。長期間の使用が考えられるため、副作用を出さないよう慎重に種類や塗り方と範囲、使用量を決めていきます。症状に合わせたステロイドを選ぶためには、長年の経験や知識が不可欠です。アレルギーを専門的にみている医療機関を必ず受診するようにしてください。

免疫抑制剤外用薬(タクロリムス)

皮膚の免疫の働きを低下させる外用剤で、これはステロイドではありません。顔などステロイドの長期間外用が難しい部位に症状が現れている場合などに用いられます。ただし、傷やひどい掻き壊しなどがある場合や既往症によっては使用が適さない場合もあります。また塗布の際に熱感が起こることがありますが、これはいずれ解消します。他に、紫外線が禁忌となるなど使用上の注意を厳格に守る必要があるため、アレルギーを専門的にみている医療機関を受診してください。

保湿剤

弱った皮膚のバリア機能を補って回復に導きます。症状が落ち着いてからも再発の予防に保湿ケアは不可欠です。根気よく続けていきましょう。

内服薬

外用薬では症状が十分に改善しない場合に使われます。

抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)

かゆみを楽にしてくれる内服薬です。合併が多い花粉症などの症状緩和にも役立ちます。

漢方薬

ご希望があれば、長期間かけて体質を改善していくことを目的に用います。

免疫抑制剤

重い症状を起こしている場合に用いられる薬剤で、ネオーラルなどがあります。併用できない薬が多く、生ワクチンが禁忌となりますし、感染症リスクが高くなるため処方は慎重に行う必要があります。

紫外線治療

特定の波長の紫外線照射により、かゆみを起こす神経を減らし、皮膚の免疫反応を抑制する効果が期待できます。ナローバンドUVB、エキシマライトなどがあり、外用薬では症状が十分に改善しない場合に検討します。なお、当院ではこの治療を行っていませんが、必要と判断されてご希望があれば近隣で紫外線治療を受けられる医療機関をご紹介しています。直接当たらないようにしてください。

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