睡眠障害(不眠症)

睡眠障害(不眠症)とは

睡眠障害とは、不眠症のほかに、過眠、睡眠時随伴型(悪夢、夜警症、夢中遊行症)も睡眠障害に含まれる。睡眠の量と質が適性ではない状態を言います。

乳幼児は、睡眠覚醒リズムが十分でなく、夜泣きをすることがあります。また子どもの慢性睡眠障害は心身への影響があると考えられています。高齢者は体内時計の同調機能が上手に働かなくなり、運動量も少なくなり、必要とする睡眠量が減るため、約30%に睡眠障害が認められるといわれています(成人では約20%)。高齢者は一般に睡眠が浅くなり、途中覚醒が多くみられ、朝早く目が覚めるようになる。身体疾患による睡眠障害も見られます。(高血圧、糖尿病、パーキンソン病、心疾患、慢性閉塞性肺疾患などのほか、腰痛や神経痛などによるものなどが増加する)。 睡眠中に筋弛緩のため、気道が狭窄され、呼吸停止が起こり、夜間不眠の原因となります(睡眠時無呼吸症候群)。65歳以上の25%に睡眠時無呼吸症候群が見られます。

入眠障害

寝つきが悪い。不眠の中で多いタイプ。

中途覚醒

寝ついた後、翌朝までに何度も目が覚める。
高齢者では生理的にもこの傾向がある。

早期覚醒

通常の起床時間より2時間以上前に覚醒する。高齢者になるとこの傾向が見られる。

熟眠障害

睡眠時間にしては十分に休んでいるのに、熟眠したという感覚が得られない。睡眠状態の検査による睡眠の内容にとくに問題が無いにもかかわらず、一晩中よく休めなかったと訴える。

睡眠の障害としては、入眠障害 中途覚醒 早朝覚醒 熟睡感の欠如悪夢があり、過度の心身の疲労によっては神経系が興奮し、まず「入眠」が障害され、入眠障害が生じます。さらに心身の疲労が高じると、「維持」も障害され、中途覚醒・早朝覚醒・熟睡感の欠如も生じます。これら睡眠に関する障害が強く、仕事にも支障が出るようであれば、睡眠薬を服用してでも睡眠を確保せざるをえないでしょう。

入眠障害があるだけの場合は、睡眠薬は入眠の前後だけ作用が働く時間の短いもので十分です。このような作用時間の短い睡眠薬を文字通り「短時間作用型」あるいは「超短時間作用型」といいます。つまり、入眠障害には「短時間作用型」あるいは「超短時間作用型」が適しています。

それに対して中途覚醒・早朝覚醒・熟睡感の欠如もある場合は作用時間の比較的長い「中間型」あるいは「長時間作用型」が適しています。うつ病の不眠では特に維持が障害され、中途覚醒・早朝覚醒・熟睡感の欠如が出現します。つまり、うつ病にも「中間型」あるいは「長時間作用型」が適しています。

睡眠障害(不眠症)の治療

不眠の治療としてまずは生活習慣の改善です。朝、起きて夜一定の時間に就寝するリズムを作るように心がけます。タバコ、アルコール、カフェイン、ストレスを可能な限り減らします。その他、就寝前に軽くストレッチをする、牛乳を飲むなど様々な治療法があります。日常生活に支障が出るようであれば、立派な病気ですので、薬剤による治療を検討すべです。眠るためにアルコールを飲むようであれば、薬を飲んで眠った方が健康的です。アルコールは眠りを浅くするため睡眠の質が悪くなります。また、入眠するのに必要なアルコール量が耐性のためにどんどん増えていきます。そうなると単に肝臓に悪いだけでなくアルコール依存症になってしまうこともあります。

睡眠導入剤

治療にはベンゾジアゼピン系薬剤を使います。1960年代にベンゾジアゼピン系薬剤が登場する前はバルビツール酸系薬剤が不眠症の治療に使われていました。最近のベンゾジアゼピン系薬剤は副作用も少なく、作用も自然な睡眠に近づいています。作用時間の長短、不安に対する作用、睡眠に対する作用の違いなどにより分類されます。症状により薬剤を選択します。

長時間作用型

睡眠作用が強いタイプとしてユーロジン、ネルボンなどがあります。睡眠中に何回も目が醒める時に使用します。抗不安作用が強いタイプとしてメイラックスなどがあります。症状が軽いときや睡眠導入剤を中止していくときなどに使用します。

短時間作用型

抗不安作用の強いタイプとしてデパス、セルシンなどがあります。内科では処方される頻度の高いベンゾジアゼピン系薬剤です。不安が強く入眠できないときに使用します。

超短時間作用型

睡眠作用の強いタイプとしてマイスリーなどがあります。入眠できないときに使用します。

不眠症の分類とその治療

一過性不眠(持続:数時間)

急性のストレス(不安、痛み、外科手術前、時差ボケなど)
持続は数日間のことが多く、睡眠薬なしでも問題ない。薬物を用いる必要がある場合、入眠困難に対し、
超短時間作用型を用いる。数日間の服用で症状は軽減できる。

短期不眠(持続:1~3週間)

仕事や家庭生活あるいは重大な病気などによる比較的長期間のストレスによる。
入眠困難に対しては超短期時間作用型または短期時間作用型薬剤を用いる。睡眠が改善されれば服薬をやめる。

長期不眠(持続:1ヶ月以上)

性格要因がおもに関係する神経症性不眠、精神疾患のほか身体障害の症状としての不眠、薬物によるもの(アルコールのほか不眠を来たす薬物)、高齢者の不眠、概日リズム睡眠障害などがここに含まれる。

神経症性不眠

神経症性不眠では入眠困難を訴えるものが多い。これに対しては超短時間作用型や短時間作用型の睡眠薬を用いる。中途覚醒や早期覚醒を伴うものでは中間作用型や長時間作用型の睡眠薬を用いる。睡眠に対するこだわりが強い場合には、抗不安薬を日中に投与して不安焦燥感を軽減するようにし、中間作用型や長時間作用型の睡眠薬を用いる。

精神疾患に伴う不眠

気分障害(うつ病)や統合失調症(精神分裂病)に伴う不眠には、抗うつ薬や抗精神病薬の中でも催眠作用のあるものを用いることが多い。

気分障害の強い不眠には、ベンゾジアゼピン系薬剤では不十分であり、ミアンセリン(テトラミドR)10~60mg、トラゾドン(レスリンR)50~150mgなどを就寝前に投与する。気分障害での持続性不眠は自殺の予測因子であるので、十分注意する。

不安障害

全般性不安障害では夜間不安が強くなり、入眠障害を訴えることが多い。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)では、夜間に覚醒して、強い不安症状を生じる。睡眠薬としては、中・長期間型のフルニトラゼパム(ロヒプノールR)1~2mgやクアゼパム(ドラールR)10~15mgなどを考える。これにより作用が不十分な場合はベンゾジアゼピン系の増量は依存形成をきたす可能性を考慮して、睡眠作用のある抗精神薬のリスペリドン(リスパダールR)1~2mgの投与にする。クロナゼパム(リボトリールR)0.5~2mgはパニック障害にも有効である。

アルコールによる不眠

アルコールは睡眠導入作用はあるが、睡眠後半逆に睡眠が浅くなり、利尿作用のため中途覚醒、早期覚醒の原因となる。アルコール離脱(退薬症候)治療には、交差耐性のあるベンゾジアゼピン系薬剤を対症的に随時投与する方が投与量も少なく期間も短く有効である。

カフェインには覚醒作用があるため、入眠障害や、利尿作用のため中途覚醒の原因となりうる(コーヒー、紅茶、緑茶、ココア、チョコレート、清涼飲料など)。

ニコチンによる不眠

ニコチンは吸入直後にリラックス作用があるが、その後、覚醒作用が数時間持続する。そのため夜間のタバコは睡眠障害の原因となる。禁煙用のニコチンガム、ニコチンパッチも同様である。

高齢者の不眠

高齢者では浅いノンレム睡眠(段階1、2)が増加し、深いノンレム睡眠(段階3、4)が減少する。また、レム睡眠も減少している。
高齢者では、睡眠が浅くなり、中断しやすい。早寝早起きとなるのは、上述の終夜睡眠ポリグラフ検査の結果のとおりである。
高齢者では、睡眠等の体内蓄積が起こりやすく、睡眠薬に対する感受性が亢進している。そのため、作用時間が延長しやすく、翌日への持ち越しや健忘、脱力などの副作用が出やすい。

高齢者では、代謝経路が単純で代謝されやすい、ロルメタゼパム(エバミールR)や筋弛緩作用の少ないω1選択性睡眠薬としてゾルピデム(マイスリーR)やゾピクロン(アモバンR)を考慮する。

薬物による不眠

睡眠障害をもたらす主な薬物

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